2016.12.06
上腕二頭筋長頭腱断裂の症状について(LHB rupture)
以前、上腕二頭筋長頭腱の断裂について書かせて頂きましたので、今回はもう少し細かくどのような症状・所見なのかをご説明させて頂きます。(前回記事は下記から)
上腕二頭筋長頭腱(以下LHB)の断裂は退行変性を基盤に発症するため、50~60歳代の中高年者に好発するがスポーツ選手や重労働者の方にもみられ、高齢者では腱板断裂を合併する場合がある。
加齢により徐々に各関節の骨の部分に骨棘(こつきょく)という骨のトゲみたいなものができ、変形がみられるとその間を走行する腱や筋肉は擦れて摩耗し損傷したり断裂しやすくなる。LHBも同様で常に負担・ストレスがかかり傷んでいる状態で、重いものを持ち上げる動作など瞬間的に二頭筋に力が入った時に「ブチンッ」と断裂するケースと、一度の力では断裂しないような小さな負担が繰り返されることによりいつの間にか切れてしまう自然断裂を起こす場合もあります。
肩の安定性を主に担っている腱板が同様に断裂や変性(摩耗)するとより安定性を増すためLHBへの依存度が増し負担が大きくなる事で断裂する事もあるので腱板機能が低下している場合は注意が必要です。
臨床像としては腕に力が入るような動作(重い物を持つ・運動時)時に「ブチンッ」と断裂音が聞こえ、同時に疼痛を自覚し運動障害が出現し痛みは上腕の前面に放散する事が多いですが、自然断裂に近いような場合は外傷も不明瞭で断裂音や疼痛も軽微な場合があります。
完全断裂の場合は、上腕二頭筋の筋腹(力こぶ)が上腕末梢部(肘近く)の方まで下降し、異常なふくらみを形成することがあり抵抗運動でより著明となります。
受傷直後は個人差はありますが、結節間溝(肩の前面)や二頭筋に圧痛がみられ皮下出血(内出血)がでますがこれらの症状は急性期(数日~数週間程度)で軽減または消失しますが、肘関節の屈曲力(曲げる力)の低下や肩関節の違和感がみられる場合が多いといわれています。
治療に関しましては、スポーツ選手や日常生活・仕事等で力作業が多く支障をきたしてしまう場合は断裂した腱の断端を再び結び固定する手術を行いますが、LHB以外にも肘を曲げる働きをする筋肉があるため全く曲がらないという訳ではないため、生活にそこまで支障をきたさない方や高齢者はそのまま保存的治療(手術しないで治す)を選択することが一般的です。
(手術を選択する場合は放っておくと断裂部がどんどん瘢痕化し変性・退縮し硬くなってしまうためなるべく早期に受けられることをおすすめ致します)
保存療法の場合は、疼痛等痛みのコントロールが可能となった後は、残存する筋の筋力トレーニング・周囲の関節可動性の向上などに努める事が大切です。
当院では鍼(はり)・灸(きゅう)治療や超音波・レーザー治療などの特殊電気治療を組み合わせる事でより効率よく治療することが可能です。
肩が痛く「五十肩」と診断をされた方でも実は断裂していた…なんてケースもありますので気になる方は当院を受診下さい。
上腕二頭筋長頭腱断裂以外にも肩こり・慢性腰痛・膝の痛み・スポーツ障害・ケガ・交通事故後の痛み・むち打ち損傷・各関節の拘縮(骨折後)等 身体の痛み・悩みがあれば当院へお気軽にご相談ください。
2016.12.03
上腕二頭筋長頭腱断裂(LHB rupture)
以前、上腕二頭筋長頭腱炎について(詳しくはこちらをクリック)書かせて頂きましたが、上腕二頭筋長頭腱が断裂(だんれつ)してしまった患者様が来院されましたのでこちらのケガについてご説明させて頂きます。
その女性の患者様は元々当院にて治療をさせて頂いておりました。以前からいわゆるママさんバレーを長くつづけられていて(しかも強豪チーム)部活をやっている学生顔負けなくらいに意識が高くとても遊びとは言えないくらいの競技レベルという印象でした。 数年前にMRIを撮り、肩のインナーマッスルである腱板(けんばん)といわれる筋肉を断裂していると整形外科で診断され、その後他の医療機関等でも治療をしておりましたが症状が改善されなかったため当院に受診されました。
肩の関節の安定性に関与する筋肉は腱板(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋)が主ですが上腕二頭筋長頭腱(以下LHB)も同じ役割を担っています。ですのでこの患者様の場合は腱板が断裂し機能が低下しているためよりLHBにかかる負担は大きかったと思います。 今回の受傷機転はバレーの試合中、ボールを思い切りアタックした際に肩周辺部に「ズキッ」と痛みが走りその後はプレーできず、試合はもちろん帰りの運転さえできずに帰られたそうです。(この一度のアタックで痛くなったという事は重要なポイントです)
その後皮下出血(内出血)が広範囲にみられたため医療機関に受診して頂きドクターに「断裂」と診断をされたそうです。
手術はすすめられなかったこともあり保存的治療(手術しないこと)を希望されておりますので、断裂してしまった筋肉以外でカバーするかたちになりますが、腱板断裂もしていてLHBの断裂も加わりより難易度の高い症例だと思います。
今はまだ炎症症状が強く痛みも強いため超音波等で鎮静化させ、積極的な運動やエクササイズは控えて安静にして頂き、徐々にスポーツ復帰に向けて残存する筋肉を強化し、周囲の関節の可動性をつけ少しでも肩周辺に加わるストレスを軽減させることが大切です。
治療や評価方法等は次回ご説明させて頂きます。
エコー上でもしっかりと断裂像が確認できました
☆☆☆皮下出血・エコー画像を詳しくみたい方はこちらをクリック☆☆☆
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2016.11.22
突き指による痛み(Jammed finger)
昨日、小学生の男児が突き指をしたため来院されました。
手の突き指というとmallet finger(マレットフィンガーについてはこちらをクリック)等で起こる剥離骨折や腱の断裂・各関節での脱臼・掌側板損傷(しょうそくばんそんしょうについてはこちらをクリック)・靭帯損傷または断裂等が思い浮かびます。
(この「パッ」と思い浮かぶ疾患の数が多ければ多いほどより正確な評価ができます。仮に突き指と聞き、思い浮かぶ疾患が一つしかなければそれしか考えられないため間違った判断をしてしまう・見落としてしまう可能性が高くなります。ですので豊富な知識が必要となります)
□まずは受傷機転から考えます
今回の患者様は、バランスボール(大きなボールで人が上に乗っても破裂せず硬くはないが皮が厚いボール)にて友人たちとドッジボール中、キャッチミスをして指が「グキッ」となったとの事でした。指が伸ばされたのか曲げられたのかは不明
(バランスボールでドッジボールという発想、さすが小学生ですね…(^_^.))
(この受傷機転で上記の考えられる疾患の中で除外されるものはありません)
□次に視診、外観上から考えます
見た目で分かる事は患部:右手第二指PIP関節(いわゆる指の第二関節)部に若干の皮下出血(内出血)がみられ、指を曲げたり伸ばしたりすると痛む
視診からDIP関節(指先の関節)のドロップ(落ち込み)がないためマレットフィンガーは除外され、痛みはあるが曲げ伸ばしでき関節付近で骨が突出はしていないので脱臼は除外され、皮下出血がみられる部位、範囲から掌側板損傷か中節骨(ちゅうせつこつ)の剥離骨折をより疑います
(皮下出血の量・範囲からして大きな骨折は考えにくくなります)
□次は触診に移ります
押されて痛むのは先ほどと同様のPIP関節部掌側(手のひら側)で、過伸展(指を伸ばす方向にストレスをかける)させると痛むが動揺性はありません。両側面部や背側(手の甲側)は押しても痛くなくストレスをかけてもさほど痛みが誘発されず関節の緩さ・動揺性もありませんので、背側の腱・側面の側副靭帯の断裂や損傷は考えにくく、視診の際と同じく掌側板損傷や掌側の中節骨部の剥離骨折がより疑われます。
□最後にエコー(超音波観察装置)にてチェックします。
疑われていた剥離骨折の様な所見は見られず、掌側板の損傷もありませんでしたが健側(痛くない方の手指)に比べ関節付近の腫れがあり低エコー(炎症症状でみられる)像があったため関節部の炎症と判断致しました。
今回の場合は、指サック状の取り外しが可能なテーピング固定をして頂き、超音波にて炎症を抑え組織の修復・回復を促します。
(掌側板損傷や骨折の場合はプライトンやアルフェンスシーネという固定具で固定する必要があります)
このように突き指といっても最低、これぐらいのケガの種類が考えられますので細かく観察し見落としが無いように慎重に診させて頂きます。
直接、命には関わる事ではありませんが骨折を見落とす事や不必要な固定・長期的な固定等をするという事は患者様のその後の人生に大きく影響してしまう場合もありますので診させて頂くという事は簡単な事ではなく責任をもって診させて頂きます。
(もちろん100%完璧。なんて人はいませんがそれに限りなく近づける様に日ごろから知識や技術の向上を目標に励んでいきたいと思います)
手の突き指以外にも肩こり・慢性腰痛・膝の痛み・スポーツ障害・ケガ・交通事故後の痛み・むち打ち損傷・各関節の拘縮(骨折後)等 身体の痛み・悩みがあれば当院へお気軽にご相談下さい。
2016.11.21
シンスプリントの治療について
先日、シンスプリント(詳しくはこちらをクリック)についてご説明させて頂きましたが今回はその治療法などをお伝えさせて頂きます。
まず原因と考えられる筋肉(下腿三頭筋・後脛骨筋・長母趾屈筋・長趾屈筋)の付着部で炎症を起こし、柔軟性が低下している事が考えられますのでその炎症をアイシングや超音波にて鎮静化させ、レーザー治療や鍼(はり)・灸(きゅう)治療・手技・ストレッチ等で筋の弾力性・柔軟性を向上させる事が大切です。ストレッチは各筋肉それぞれが一番伸長される肢位で行うとより効果が期待できますのでホームエクササイズとしても伝えさせて頂きます。
炎症が引き痛みが軽減された後は、下肢のアライメント(バランス)や足部のアーチ等をチェックし痛みの原因と考えられるような状態・姿勢だった場合はエクササイズや足底板・整体等でアプローチし治療する事で再発予防にもなります。
代表例としては膝を曲げた時に内側に曲がる「knee in」(ニーイン)しやすい場合は前方荷重エクササイズや足のアーチが低下している偏平足にはタオルギャザーエクササイズなどを行います。他にも背骨の硬さや側弯症(そくわんしょう)・骨盤、股関節の硬さ・足部の関節の緩さ・バランス感覚の低下等も影響される事が考えられますのでそれらの点も評価させて頂きます。
中・高校生は医療機関等へ受診し競技そのものを中止とされる事や通院を理由にメンバーから外され試合に出場出来なくなる事を恐れ「だましだまし」競技を続けてしまうケースがあり、そのまま放置していると悪化し最終的には「疲労骨折」を起こしてしまい結果的に競技を長期的に中止となってしまう事がありますので早期から治療をお受け頂く事が大切です。ですので当院では、スポーツ活動の継続または中止かは状態にもよりますが、「絶対安静」はあまりせず、治療をお受け頂きながらできる範囲で行っていただける様な治療プランをご提供させて頂きます。もちろん少しでも早く痛み「ゼロ」を目指して治療させて頂きます。
練習前や試合前にはテーピング等で固定・サポートする事も必要ですので巻き方などもお伝え致します。
シンスプリント以外にも肩こり・慢性腰痛・膝の痛み・スポーツ障害・ケガ・交通事故後の痛み・むち打ち損傷・各関節の拘縮(骨折後)等 身体の痛み・悩みがあれば当院へお気軽にご相談ください。
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手が痛いのは腱鞘炎ではなくリウマチ?こんな症状がでたら要注意
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